サケの稚魚

サケ 鮭 さけ アキアジ

旭山動物園の施設には、飼育員さんによる工夫があちこちにちりばめられています。
大きな施設など動物の凄さに驚くのはもちろんのこと、所々にある手作り看板など
動物の生態を熟知し、誠実丁寧に動物と接しているからこその情報が書かれていて実に楽しいのです。
その中のひとつ、私のお気に入りは、アザラシ館の入り口で飼育されていたサケの稚魚。

サケの稚魚サケの稚魚サケの稚魚

サケはみなさんご存知の食卓でも馴染みの深い魚。
北海道では「アキアジ」などとも呼びます。近年では「秋鮭」などと表されることも多いですね。
道外の方だと「シャケ」と呼ぶ人も多いですけど、道産子である私個人的にはなんとなく違和感があり、
「アキアジ」や「鮭(サケ)」の方が呼び名としてしっくりきます。
この鮭、近年では海水温の上昇などで微妙に捕獲される時期や数が変化してきていて
少しづつ問題となってきています。みんながご存知の鮭ですが意外と知られてないことが多いのも事実なのです。

アザラシ館の入り口にて飼育展示されていたサケの稚魚

アザラシと密接な関係にあるサケについて学んでほしいのと、
鮭が川に戻ってきて産卵できる豊かな自然環境の大切さを感じて欲しいという願いを込めて
旭山動物園では3年ぶりとなるサケの卵が飼育されました。

100個の卵が飼育され、
その卵は2009年10月26日に受精し、2010年1月5日からふ化し始めました。
サケの稚魚
2010.1.22撮影

お腹には「さいのう」という赤いものがついています。
実はこれ稚魚にとって凄く重要。これがないと生まれたばかりの稚魚は生きていけません。
ふ化したばかりの頃は自分でエサを捕食することが出来ないので、
ふ化してから約6週間ほどこの「さいのう(卵黄)」の栄養で育つのです。
サケの稚魚

つまり、成長するにつれこの「さいのう」は消えていきます。
この頃は水底であまり動きも少ないですが、大きくなるにつれ体もスッとし水面近くまで泳ぐようになるのです。
サケの稚魚
2010.3.1撮影

サケの稚魚
2010.3.16撮影

サケの稚魚
2010.3.25撮影

サケの稚魚
2010.3.30撮影

サケの稚魚
2010.4.5撮影

あんなに小さかったサケの稚魚も5〜6センチほどになり、サケ科の稚魚独特のパール模様もくっきり見えます。
こうなると自然界では流れてきた川虫などをパクっと口から食べるようになり
その個体はドンドン大きくなっていきます。

旭山動物園で飼育されていたこの鮭の稚魚は2010年4月11日に石狩川に放流されます。
川には幾多の試練があり外敵も多いわけですが、そこでたくましく育ち海へ降りていく準備が整ったころ
パール模様の斑点が消えギンギラの体になります。

その頃の個体に触れると簡単にウロコが取れて手についてしまうほどギンギラ。
そして栄養豊富な海で4年〜8年、さらなる過酷な生存競争を勝ち抜いた者だけが
70センチ前後、巨大な者だと1mくらいにまでの大きな体格へと変貌を遂げ川に戻ってきて産卵します。
産卵後はオスもメスも力尽きて死んでしまいます。

ちなみに産卵の時に川に上ってきたサケは店で売ってるようなギンギラとして体ではなく、
赤黒くブナがかってており、カラダは傷だらけ。
北海道ではその姿のサケを「ほっちゃれ」と呼びます。

やがてその朽ちた肉体は川や森の栄養となり、プラクトンや川虫を育て
それは産まれてきたサケの稚魚たちのエサとなり、次の世代のサケの子供を大きく育てていくという
ほんとうに物凄く偉大なお魚なのです。

サケの稚魚たちの姿を通して

アザラシとサケは自然界では住む場所が同じで、アザラシは鮭を餌にしています。
つまり人間とアザラシとサケは密接な関係性を持っているのです。

近年、北海道のサケなど海の生物にも少しずつ変化が生じています。
自然の問題は必ずと言っていいほど単一的ではなく、複合的な問題が絡んでいると思いますが
影響を及ぼしているのは、環境問題がその1つなのは間違いないと思います。

あざらし館で飼育されていたサケの稚魚も石狩川に放流されるのですが、
旭山動物園の飼育員さんがおっしゃる通り、ただ放流して終わりではなく、
サケが同じ川に戻ってこれるような豊かな川や自然環境が残っていることが一番大事で、
それはきっと自分達の街の、身近にある川や森といった自然に少しだけでも興味を持つことで、
良い方向に変わってくるのではないかな・・・・・この稚魚たちの姿はそう感じさせてくれたのでした。